日本一標高が低い地点は、青森県に存在する。
ここまで読んで「ああ、青函トンネルに設置されている水準点のことだろう」などと早合点してはならない。
れっきとした地上にあって、太陽を拝むことができる場所で、もっとも低い地点が青森県に存在するのだ。
その場所は、八戸キャニオンと呼ばれているらしい。
ここまで読んで「ああ、そういえば青森県に『日本キャニオン』があったっけな」などと早合点してはならない。
日本キャニオンではない。八戸キャニオンだ。この図の枠内にあるのだ。もっとも、ぼくも今回調べるまでは正確な位置を知らなかったのだけれど。
ちなみに、日本キャニオンは反対側(日本海側)だ。気が向いたらそのうち紹介するかもしれない。
日本キャニオンは自然の渓谷だが、この八戸キャニオンは自然にできたものではない。さらに言うと、渓谷ですらない。
正式名称は住金鉱業株式会社八戸石灰鉱山。つまりは石灰石の露天掘り鉱山なのだが、どんどん深く掘り下げているうちに、ここまで深くなったらしい。
青森県産業観光ホームページの記述によれば、最深部は海抜マイナス160mに達するとのこと。八郎潟干拓地、江東ゼロメートル地帯、濃尾平野などでもっとも低い地点でもマイナス10mには至らないから、まさに群を抜いて低いといえるだろう。
このような大規模の鉱山であれば、地図を眺めているだけでも難なく見つけられる。
崖の地図記号が屏風のようにそそり立ち、凹地を示す等高線が縫うように走っているが、この図からの地形の把握は難解を極める。
松館川の「川」の字の南東に記されたわずかな計曲線が0mの等高線だと思われる。この仮定が正しければ、「せっかい」の地図記号付近を走る計曲線がマイナス100mに相当する。周囲の丘陵地の標高は100m前後であるから、実際には200m以上掘り下げたということになる。
鉱山の最深部が海抜マイナス100m以下にあることを、この地図から読み取れる人はほとんどいないだろう。
せっかくの日本唯一の場所なのだから、せめて標高点を記すくらいのことはできないのだろうか。お役所の地図は、売れても売れなくても構わないということか。実に色気がない。
図の中央を市境が通っている。境界の北側が八戸市、南側が階上町になる。
境界線が不規則に折れ曲がっている箇所は以前の自然地形(おそらく旧松館川)と関係があると思うのだが、ここまで激しく地形が変化した後では、当時の地形を思い浮かべることはほぼ不可能だ。
一方で、直線状に引かれた境界も見受けられる。ここは以前からこのような境界だったのだろうか。
大規模な石灰鉱山が地元に落とす金たるや、相当のものだろう。この境界が各自治体の税収配分に寄与する役割を考えると、なかなか興味深いものがある。
どうしても凹んだ地形を眺めたくなって、手頃な航空写真がないかと探してみた。
地形が読み取れるかどうかは微妙なところだろう。中央部に射し込んだ影から、そこが凹んでいることを推測するのが精一杯といったところか。
それでも、ほんの少し前までは航空写真を無料で眺める機会などないに等しかったのだから、感謝しなければならない。
やはり、現地を直接見学するしかないのだろうか。
このサイトによれば、一般向けに無料で公開しているらしい(ただし鉱山内への立ち入りは禁止)。
