人里離れた場所に設置されているがため、いったい誰が使うのかわからない駅のことを、専門用語で秘境駅という。
何の専門用語かときかれても困るが、そういうことになっている。牛山隆信氏のサイト『秘境駅へ行こう!』あたりが起源とされる。
最近、この秘境駅がひそかなブームとなっているらしい。
これから紹介する坪尻駅もそんな秘境駅のひとつで、れいの秘境駅のサイトでは全国七位にランクされている。先日ついに駅スタンプまで設置されたそうだが、そんなものを置いて駅が賑わいでもしたら、秘境駅じゃなくなるんじゃないかと心配になる。
いや、駅というものは本来は賑わうべきだということは知っているけれど。
それに、坪尻駅はどうやっても賑わいそうにないということも知っているけれど。
坪尻駅付近の拡大図である。駅前はもとより、周辺にも集落らしい集落が存在しない。
異様に短い間隔で設けられた国道32号線の水準点は、ここが交通の要衝であったことと、猪ノ鼻峠の勾配の厳しさを物語っている。
しかし四国の山中というものは、どんな斜面に人が住んでいるものだと思う。坪尻駅にもっとも近い木屋床集落は、谷底の駅からの標高差が200m程もあるが、鉄道の駅に関係なく、大昔からこのように斜面で生活が営まれていたに違いない。東側の斜面も似たようなもので、隣の箸蔵駅からロープウェイで登る箸蔵寺など、雲上の世界といった観がある。
坪尻駅は、駅周辺が秘境なのではなく、付近一帯が秘境なのだ。

これは2002年9月に実際に坪尻駅を訪れた際に撮影した写真のうちの、どうということのない一枚である。有名なスイッチバック構造の写真も撮影したのだが、特定可能な人物も一緒に写っているため、プライバシーの問題からここには掲載することができない。
ご覧のように、上りと下りとで停車する列車の本数が大きく異なっている。
利用頻度が極めて低く、しかもスイッチバックという面倒な構造の駅のダイヤは、列車運行の都合を最優先に作られているのではないだろうか。あくまでも、ぼくの想像にすぎないが。
