君の知らない世界一周物語

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“I was music.”コロン劇場と久石譲のジブリ世界

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ブエノスアイレスのコロン劇場でオーケストラを見た。

1,000ペソ(約1万円)もするような席もあるが、立ち見席なら100ペソということで、ぼくは100ペソの立ち見席を選んだ。

 

ぼくはオーケストラは”からっきし”、つまり初心者だ。漫画『のだめカンタービレ』は読んだことがあるが、「カンタービレ」が「歌うように」という意味の音楽用語だという程度しか知らない。

 

 

クラシックというのは、ぼくらが慣れ親しんだ”歌詞のある音楽”とは大きく異なるものである。

”映像的な音楽”と評されるBUMP OF CHICKENの曲などは、聞いているとその情景が目に浮かぶものだが、クラシックを聞いてもぼくにはなんの情景も得られない。

 

 

 

「感動と音楽の関係性とは、いったいなんなのか。”感情”と”言語”はどちらが先立つものなのか」

コロン劇場でよくわからないクラシックを聞きながら、ぼくはそんなことばかりを考えていた。

しいていえば、指揮者の動きを眺めるのが一番楽しかった。のだめカンタービレの”千秋”を思い出しながら。

 

 

 

 

「言葉と感動の関係性」

これは人類普遍のテーマである。

もし、ぼくらに”怒り”という言葉(概念)がなくて、全人類が”感謝”という概念のみ存在する世界に生きているとしたら。きっとぼくらは戦争などしないだろうし、世界はいまよりも、少しは平和に推移していくことだろう。

 

「言葉」というのは、ぼくらの世界の構成要素であり、ヒトがヒトたるための最重要要因である。

おそらく言葉がなければ、ぼくらはヒトでさえない。よくわからない生命体が、よくわからない音を発しながら、この悠久の宇宙で、なんの歴史も積み重ねることなく、永遠の中を浮遊していただろう。

「あるいはーーー」ぼくは少しゾクッとしながら思った。「言葉がなければ、そもそも宇宙さえも存在しなかったかもしれないな」

 

 

 

「物体が先か、言葉が先か」

この命題は、哲学史上永遠に議論され続けてきたものであり、おそらくこの先も永遠に決着がつかないだろう。

 

 

 

 

言葉が先か、物体が先か。

ある日突然に、頭のいい誰かが言葉を生み出したのだろうか。これはどこまで行っても”ニワトリが先か卵が先か”みたいな堂々巡りになってしまう。

言葉が先に存在したのか、ヒトが先に存在したのか。ともすれば、ダーウィンの「進化論」論争にまで発展しかねない問題なのだ。

 

 

ふとステージに目をやると、指揮者がおおげさに情熱的に腕をふり、それに合わせてコンマスが情熱的に頭を振りながらヴァイオリンを奏でている。

※コンマスとは?⇒コンサートマスターの略。原則として、客席から見て指揮者のすぐ左側に座ったヴァイオリニストがコンマスである。コンマスは、指揮者とともに音楽に色を付ける重要な役割をする。音の切り方や強弱の付け方など、コンマスがひとつの指標となる。

 

 

 

ぼくは再び自分の思考旅行に戻る。

”映像的な音楽”といえば、久石譲だ。

※久石譲とは?⇒ひさいしじょう。ピアニスト・作曲家。ジブリ映画のほとんどの楽曲を作っている。

 

たとえば久石譲の音楽を聞くと、ぼくらの頭の中にはラピュタの世界だったり、ナウシカの世界だったりが鮮やかに映像として再生される。

 

ではもし、ジブリ映画を見たことのない人が久石譲の音楽を聞いたらどうなるのだろうか。

少なくとも、ジブリ映画の映像が脳内で再生されることはないだろう。音楽を聞いたときの感動も小さいのかもしれない。

 

 

 

 

「あるいはーーー」指揮者は相変わらず踊るように腕を振っている。「ぼく自身が音楽だったのかもしれない」

 

ぼくは他人が奏でた音楽を聞きたいのではなく、”自分によって奏でられた音楽”になりたいのではなかろうか。

そうすれば、”感動する感動しない”の客観的存在から一歩抜け出し、ぼくはぼくの一人旅をするだけの主観的存在になり、問題は解決するのではなかろうか。

 

 

 

 

すべては”よくわからない”のだ。

 

 

 

 

 

2時間の公演はあっという間に終わった。聞いたことのある楽曲は演奏されなかった。

最後は割れんばかりのスタンディングオベーションだったので、きっとすばらしい公演だったのだろう。けれども、ぼくにはその”良さ”も”悪さ”も、よくわからなかった。

 

 

 

音楽とは、こんなにも頭を悩ませる事象だっただろうか。

自分でもわけのわからないことを考えながら、コロン劇場を去るぼくに浮かんできた言葉は

「I was music.」だった。

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