君の知らない世界一周物語

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詐欺られた!ガンジス川マニカルニカ・ガートで薪代徴収

ガンジス川沿いは火葬場になっており、「○○ガート」という名称で区切られている。

マニカルニカ・ガートは最大規模の火葬場として知られ、観光客がよく訪れる。

観光客が集まる場所には詐欺師も集まるということを、僕は肝に銘じておくべきだったのだ。

 

8月3日、日曜日の午後。

迷子になりながらも、なんとかゲストハウスに到着した僕。

まだ15時前。ここからはガンジス川も近いし、少し散歩してこよう。

 

 

 

グーグルマップを見てみると、最大級の火葬場「マニカルニカ・ガート」が近い。

よし。目的地はマニカルニカ・ガートだ。

 

とはいえ、またしても迷路。無事たどり着けるだろうか…

 

 

 

 

数分後。案の定、迷子である。

しかし、なるべくインド人の助けは借りたくない。

 

グーグルマップを見つつ、迷いながら歩いていると、やはりインド人の少年が話しかけてきた。片言の英語だ。

少年「マニカルニカ・ガートに行くの?」

 

年齢は中学生といったところだろうか。

どうせまたチップを要求するんだろう。そう思いながらも、僕は返事をした。

僕「そうだよ。場所わかる?」

少年「わかるよ。ついてきて」

僕「ああ、案内はしなくていいよ。君に払うお金は持ってないから。ごめんね。方角を教えてくれるだけでいいんだ」

少年「お金なんていらないよ。ついてきて」

 

もはやインド人の言うことはすべて嘘に聞こえるが、少年を信じてついていくことにした。

 

 

3分ほど歩くと、マニカルニカ・ガートに到着した。

※ガートでの写真撮影は禁止されているので、残念ながら写真はありません。

 

 

少年にお礼を言って別れよう。

僕「案内してくれてありがとう。バイバイ」

そう言って、火葬場に向かう階段を下りようとすると、少年に止められた。

少年「ちょっと待って。そっちは遺族しか入れないよ。観光客はこっちの建物から火葬場を見学するんだ」

 

少年が指差すほうに、3階建てぐらいの建物がある。その建物の向こう側から煙が上がっており、たしかにそこから火葬場が見学できそうだ。

 

 

少年に先導され、建物の入口まで来ると、老人が僕を待ち構えていた。老人は丁寧な英語で話す。

 

老人「私はここで遺体を焼く仕事をしている者です。私はあなたをガイドしますが、お金は不要です。ただ、最後に薪代を払ってもらうことになります」

僕「薪代っていくらなの?」

老人「1kg380ルピーです。(約650円)」

僕「高いよ。なるべくお金は払いたくないんだけど…」

老人「それなら、小額でも結構です。払える金額だけ払ってもらえれば」

僕「OK」

 

 

 

老人に連れられ、建物の2階へ上がる。2階には何人かの老婆が床に座っていた。

 

そこからは火葬場が見渡せた。

5か所ぐらいでキャンプファイヤーのような木組みが燃えている。壊れたマネキンのような、あいまいな人型をしたものが、炎の中に見え隠れしている。

 

しかし、火葬場は川沿いの低い位置にあるため、実質的には4階建ての建物から地面を眺めるぐらいの距離がある。たしかに遺体が燃えているのはわかるが、遠くてよく見えない。

 

 

老人は、なにやら僕のとなりで唱えている。独り言にも似た口調だ。ひどく事務的な声。

老人「ここでは1日2,000体以上の遺体が焼かれます。観光客は1日600人ぐらい来ます。

インド中から遺体がやってきます。燃やすのにはお金がかかるので、貧乏な家庭は遺灰だけここに持ってきます。

赤ちゃん、妊婦、修行者の遺体は燃やさず、重りをつけてガンジス川に沈めます」

 

見事な解説だ。きっと今まで、何百何千という観光客に同じ説明をしてきたのだろう。

勉強にもなったし、彼の説明に対して100ルピーぐらい払ってもいいかなと思っていた。

 

 

 

と、10分ほど火葬場を眺めていたら、おかしなことが起こった。

 

火葬場に下りることができるのは遺族だけだと聞いていた。事実、火葬を至近距離で見守っているのはインド人だけだった。

しかし、老人の説明を聞いているうちに、あきらかに観光客とわかる欧米人グループが火葬場に下りてきたのだ。

 

え?どういうこと?

電流走る。

 

 

もしかして、遺族以外でも火葬場に入れるのではないか?

現に欧米人グループは火葬場に入っているし、なんのおとがめもないようだった。

 

 

不審に思った僕は老人に聞いてみた。

僕「ねえ、あそこにいる観光客は、なぜ遺族でもないのに火葬場に入れてるの?」

老人「遺族でなくとも、薪代をおさめれば火葬場に入れるんです」

 

本当だろうか?僕の心の中で、ある疑惑が大きくなり始めていた。

「僕は今、詐欺のベルトコンベアーにのせられているのでは?そういえば先導してくれた少年も、老人とグルのようだった。そもそも火葬場には無料で誰でも入れるのではないか?」

 

 

僕「火葬場に下りてみたいんだけど」

老人「それではこちらへどうぞ」

 

 

老人が先導し、同じ部屋にいた老婆の前に僕を座らせる。

老人「今からこの老婆が、あなたとあなたの家族に祝福を与えます。家族の名前を言ってください」

 

僕が家族の名前を言うと、老婆は僕の頭をポンポンとなで、なにやら呪文のような言葉を言ったような気がする。

 

 

老人が口を開いた。

老人「さあ、あなたは薪代をいくら払いますか?」

僕「100ルピー(約170円)払うよ。どうぞ」

 

僕はポケットから100ルピーを取り出して老人に渡そうした。しかし…

老人「薪代はキロ単位なので、最低でも380ルピーです。また、あなたは成人なので、2kgぶん(760ルピー)払ったほうが幸せになれます」

僕「いや、あなたはさっき、払える金額でいいって言ったよね?僕は100ルピーしか払わないよ」

老人「最低でも380ルピーです。これはあなたの家族のためでもあるのです。あなたのカルマ。ライフなのです」

 

聞く耳をもたないうえに、めちゃくちゃしつこい。小銭がなかったので、結局400ルピー払ってそこを出た。すごく後味が悪かった。

僕「これで火葬場へ下りてもいいんだよね?」

老人「あなたは薪代を払ったので、火葬場に下りることができます」

 

 

 

老人と別れ、僕は火葬場へ下りた。炎で顔が熱い。3メートル先で遺体が焼かれている。

 

 

事務的に焼かれていく死体を眺めながら、僕は敗北感を味わっていた。タイとカンボジアの国境を思い出す。

「なぜ僕はいつも、詐欺のベルトコンベアーにのせられてしまうのだろう」

自分が情けなかった。

 

 

 

 

すべてを疑うことを信条としたのは、哲学者デカルトである。

デカルトはあらゆるものを疑い、その結論として、かの有名な「我思うゆえに我あり」にたどり着いた。

あらゆる情報は偽である可能性がある。しかし、今まさにこのことを考えている自分の存在だけは真である。この言葉には、そのような意味が込められている。

 

僕もデカルトに習い、すべてを疑おうとしてきた。世の中の常識を疑うことが、新たな発見につながると信じてきた。

しかし、まだまだ見えていないものがあるようだ。

 

 

 

火葬場をあとにして宿に戻ろうとすると、さきほどの少年が僕を待っていた。

少年「ここまで案内したんだから、チップちょうだい」

 

やれやれ、おまえもか。

 

 

僕「いや、最初に言ったよね?お金は払わないって。君もお金はいらないって言ったよね?あれは嘘だったの?」

少年「そんなこと言ってない。チップよこせ」

僕「君は嘘つきだね。バイバイ」

少年「嘘つきはお前だ!嘘つき!」

 

 

 

嘘つき少年を振り切り、迷いながらも宿に戻ることができた。

 

そのまま屋上へ行き、ガンジス川を眺めた。僕は遠くから見るガンジス川のほうが好きだ。
写真 2014-08-04 8 56 13

「強くならなくてはいけない」

そう自分に言い聞かせた。

 

 

 

夜。少し雨が降った。

叫び声にも似た牛の鳴き声が、どこからか聞こえていた。

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Comments & Trackbacks

  • Comments ( 2 )
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  1. 初めまして。インド一人旅を計画しているものです。
    旅行記とても参考になります。
    とりあえずインド人には着いて行くな!ですね(笑)。

    火葬場は見たい場所ですので行く際には気をつけなくてはと思っております。
    バラナシではあまりに町が汚くて食欲が失せると聞きますが体調はいかがでしょうか。
    また良かったらインド旅行記聞かせて下さい。それでは失礼しました。

    • なり@管理人

      >ユキさん

      初めまして。コメントありがとうございます。

      火葬場はかなり詐欺が横行してるみたいなので、話しかけてくるインド人は全員無視して、一直線で階段を下りるのが賢明かと思われます。

      インド一人旅、楽しんできてくださいね。

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