君の知らない世界一周物語

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もしや睡眠薬強盗?インド人のパーティーに招かれて…

8月15日。

日本人宿サンタナでは、朝食時に宿泊客同士で会話を楽しむのが日課だ。

その際、おもしろそうな話を聞いた。

 

女性用ドミトリーに宿泊中の女子大生・リエさんは、夏休みを利用してインド旅行に来ている。

昨日、近所を散歩していたらインド人男性に声をかけられ、一緒に近所を観光したり、バーでお酒を飲んだりしたらしい。しかも、食事はそのインド人が全部おごってくれたとのこと。

そのときに、次のような誘いを受けたというのだ。

「明日はインドの独立記念日。友達で集まってホーム・パーティーをやるから、ぜひリエにも来てほしい」

 

 

 

話は変わるが、あなたは「睡眠薬強盗」という言葉をご存知だろうか。

言葉巧みに観光客に近づき、睡眠薬入りのドリンクを飲ませて身ぐるみをはがすという、強盗手段のひとつである。

インドでも睡眠薬強盗は発生しているらしい。ネット検索すると、実際に睡眠薬強盗の被害にあった人のブログが出てくる。

 

 

 

話を食堂に戻そう。

リエさんはこのパーティーに行くか迷っている様子だった。そのインド人はいい人そうだったが、やはり少し怖い、と。

 

そこで、僕とエミカさん(同じ宿の女子大生)がリエさんに同伴することになった。

 

 

 

朝10時。待ち合わせ場所のカフェに行くと、くだんのインド人男性・ムナが僕らを待っていた。

細身のイケメンだ。

 

まずはラッシーで乾杯。
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簡単な自己紹介を終え、しばし会話を楽しむ。

ムナはバラナシ出身の24歳。2年前からデリーに移り住み、今はアーユルヴェーダを学んでいるらしい。

 

 

 

90分ほど会話を楽しんだあと、場所を移動。
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メイン・バザールから少し路地に入り、アパートのような建物に到着。

そのまま屋上まで連れて行かれる。

 

屋上から周囲を眺めると、屋上で凧(たこ)揚げを楽しんでいるインド人がたくさん目に入る。
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本日8月15日はインドの独立記念日。インドではこの日に凧揚げをするのが恒例らしい。

近くの屋上から笑い声が聞こえてくる。大人も子どものようにはしゃぎ、凧揚げを楽しんでいる。

 

 

 

まだムナの友人は2人ほどしか集まっていないようだ。

ムナが言うには、これからマトン(羊肉)のカレーを作るらしい。

時刻は12時。ちょうど昼飯時で腹も減っている。楽しみだ。

 

 

と、ここで参加費の回収。

リエさんは昨日すでに参加費500ルピー(約850円)を払っており、僕とエミカさんも払うように言われる。

 

参加費がかかるなんて思っていなかったので、少し戸惑う。エミカさんも同じく戸惑った表情。

しかも、僕は睡眠薬強盗を用心し、現金を300ルピーほどしか持ってきていない。エミカさんも現金をあまり持っていない様子。

僕「悪いけど、今は300ルピーしか持っていないんだ。それで足りないなら帰るよ」

エミカさん「私は100ルピーしか払えないよ」

 

ムナは少し渋った様子だったが、僕らからお金を受け取って食材を買いに行った。

屋上に取り残される日本人3人。

 

 

 

屋上には日よけがない。

雨期の雲間から太陽が顔を出し、僕らを容赦なく照らしている。

空にはたくさんの凧が揚がり、近くの屋上からインド人の歓声が聞こえる。

 

 

このとき、僕らはまだ半信半疑。ムナが何かを企んでいる悪人にも見えるし、善良なインド人にも見える。

今までの”詐欺られ経験”とネット情報が、僕に警鐘を鳴らし続けているのだ。

「インド人には気をつけろ」と。

 

しかし冷静に考えると、ムナが善良なインド人に思えてきた。

もし睡眠薬強盗なら、会費なんて取らずに無料で料理を振る舞ってくれるだろう。まずは睡眠薬を食わせることが先決だからだ。

会費なんて取らなくても、眠らせたあとで身ぐるみをはがしてしまえばいい。

それなのに、ムナはわざわざ会費を集めた。これは本当に健全なパーティーなのかもしれないぞ。

 

 

 

屋上で1時間ほど待ったのだが、まだ料理は到着しない。

不安になってきたので下の階におりてみると、ムナとその友人がマトン・カレーを作り始めていた。

コンロのガスがなくなり、それを買いに行っていたらしい。食材のカットは済んでいるが、火がないので調理は全然進んでいなかった。

 

しばらくして新しいガスコンロが到着し、ようやく鍋に火が通り始めた。

まずは油でタマネギを炒める。
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次にマトンとスパイスを投入。
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ここから1時間ほど煮込む。

ムナ「マトンはよく火を通さないとお腹を壊すからね。じっくり待たなくてはいけない。時間をかけて作ったマトン・カレーは最高だよ」

 

 

 

16時。ムナの友達がぽつぽつと集まってきた頃、ようやくマトン・カレーが完成した。

チャパティとビールまで用意してくれた。
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ビールを飲むときは「睡眠薬が入っていないか?」と気になったが、目の前で缶を開けてくれたので安心して飲めた。

食べ方はインディアン・スタイル。フォークやスプーンなどない。肉を手でわしづかみして、豪快にかぶりつく。

 

マトン・カレーはうまかった。肉は柔らかく、スパイシーな味付けでチャパティも進む。

 

 

 

マトン・カレーを食べ終え、17時頃、僕とエミカさんは宿に戻ることにした。

リエさんはそのあとも残り、ムナの友人と盛り上がったらしい。

女は度胸、である。

 

 

 

 

リエさんは20時頃まで遊び、宿に戻ってきた。

僕らが帰ったあと、屋上で凧揚げをしたり、ムナの友人と仲良くなったり、それを見たムナがヤキモチを焼いたりと、パーティーを存分に楽しんだ様子だった。

 

 

 

 

結論として、ムナは善良なインド人だったのだろう。

しかし僕は、これまでの痛い経験もあり、心の底から彼を信用することができなかった。

最後の最後まで、疑う心を消し去ることができなかったのだ。

 

 

 

別れ際、ムナがつぶやいた言葉が今も残っている。

「多くの観光客は、インド人を嘘つきだと言う。たしかに悪いインド人もいるけど、僕はあなたたちをリスペクトしているんだよ。No friends, no lifeさ」

 

 

8月15日。

僕にとって、この旅でもっとも危険な橋を渡った日といえるだろう。

”疑い”と”信用”。

テーゼとアンチテーゼの狭間を揺れた、エキサイティングな体験だった。

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