君の知らない世界一周物語

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バラナシからポカラへ移動。乗り合いジープでエヴァ初号機暴走

8月5日、水曜日。

クミコハウスでも早起きの習慣は変わらない。

今日はバラナシを出て、ネパールのポカラへ向かうぞ。

 

時計を見ると6時を少し過ぎたところ。横を見ると、シンジ君はすやすやと眠っている。

 

ふと思いつき、ドミトリーから屋上へ上がる。

すでに太陽は顔を出し、ガンジス川を美しく染めていた。
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この辺りには猿がいて、ちゃんと戸締まりしないと部屋に入ってきたり、窓から荷物を盗られたりしてしまうらしい。

クミコハウスの屋上にも猿がいた。
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朝日を浴びるのは気持ちがいいな。

 

 

 

ひとしきり猿の観察を楽しんだあと、ドミトリーに戻る。シンジ君はまだ寝ている。

映画「スタンド・バイ・ミー」で、主人公ゴーディが早起きして鹿と出会うシーンがある。僕はそのシーンを思い出した。

僕の大好きな映画のひとつだ。

 

 

ところで、クミコハウスでは50ルピー(約85円)で朝食が付く。おかわり自由。

せっかくなので食べてみた。
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トースト、プレーンオムレツ、カレーライス、野菜炒めというシンプルな朝食。チャイがうまい。

 

 

 

部屋に戻ってブログを書いていたら11時になっていた。

昼はシンジ君と再びメグカフェ。チキンカツ丼。
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2日で3回も来店した僕らに、メグさんは酢の物をサービスしてくれた。
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酢の物を食べるのも久しぶりだ。これも舌鼓を打ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

昼食後、ラッシー専門店「ブルーラッシーショップ」へ。人に道を聞きながら迷路を進む。
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無事到着し、チョコレートラッシーを注文。ラッシーというよりはヨーグルトに近い。
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濃厚なヨーグルトといった感じで、うまかった。

 

 

 

その後、宿に戻ってネット作業。

8月末のトマティーナ(トマト投げ祭り)に参加するため、スペイン・バレンシア行きの航空券を購入せねばならない。

ところが、インド特有の停電に悩まされる。(節電のための計画停電)

停電のためかWi-Fiが不安定で、たかが航空券購入に3時間も悪戦苦闘してしまった。

 

 

18時30分。近所のレストラン「スパイシーバイト」で夕食。

からあげ定食が予想外にうまくて感動。
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宿に戻って出発の準備に取りかかる。寝台列車は23時15分発車予定。

シンジ君と映画話を楽しみつつ、ゆっくりと荷作り。

シンジ君は映画「モテキ」をまだ観ていないというので、「めっちゃおもしろいから、絶対観たほうがいいよ」とゴリ推ししておいた。

セカチューといい、モテキといい、森山未來と長澤まさみのコンビは外れがない。

 

 

21時30分。久美子さんにあいさつをしてお金を払い、宿を出る。もうバラナシに来ることはないと思うけど、クミコハウスにはまた来たいな。

本当に心安らぐ素敵な宿だった。

 

 

 

バラナシ・ジャンクション駅までは3kmほど。

ゴウドリヤー交差点まで歩き、そこでサイクルリクシャーを拾う。大通りに到着した瞬間、多くのドライバーが僕に殺到する。

100ルピーから値切り、駅まで50ルピー(約85円)で交渉成立。

 

そういえばサイクルリクシャーに乗るのは初めてだな。
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サイクルリクシャーはゆっくり走るので景色を楽しむことができる。

 

 

 

バラナシのお祭り騒ぎを離れ、辺りはだんだん静かになっていく。

ドライバーは汗だくになりながらリクシャーをこいでいる。

 

 

 

30分ほど走ると、バラナシ駅に到着した。
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ドライバーに50ルピーを払うと、悲しげな顔で「モア10ルピー」と言う。

サイクルリクシャーを楽しめたし、チップとしてあげてもいいか。

 

たしか、小銭は12ルピーぐらいあったはずだな。

 

小銭入れから硬貨をすべて取り出し、ジャラジャラとドライバーに渡す。

「サンキュー、サー」

彼はうれしそうに去っていった。

 

 

 

 

駅構内に入る。多くのインド人が床に寝そべり、電車を待っていた。

 

発車時刻まで1時間以上ある。

電子書籍で時間をつぶそう。

 

 

 

24時頃。予定時刻を50分ほど遅れて、寝台列車は発車した。
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蒸し暑いので、ズボンを脱いでパンツになる。

パンツになるとすごく涼しくて、気持ちよく眠ることができた。

 

 

 

翌朝8時頃にゴーラクプル駅に到着。
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ズボンを脱いだせいか、いつになくぐっすり眠れて気分がいい。これは新しい発見だ。

 

 

 

 

次は国境への移動。

駅から出た瞬間に、乗り合いジープから声をかけられる。

ドライバー「どこ行く?」

僕「ポカラ。国境までいくら?」

ドライバー「200ルピー」(約340円)
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値切ろうとしても、かたくなに拒まれる。現地人もおとなしく200ルピー払っていたので、これが相場なのかもしれないな。

200ルピー払い、ジープに乗り込む。

 

 

ゴーラクプルから国境までは80kmほど。3時間ほどかかる。

 

あとから振り返ると、バラナシからポカラの移動では、この乗り合いジープが一番きつかった。

 

僕が乗り込んだのは後部座席のさらに後方。荷台に即席で作られたシートだ。

これが最悪だった。天井がやたら低いうえに、満席で身動きが取れないのだ。

暴走したときのエヴァ初号機のような姿勢(猫背)で3時間耐え抜いた。
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ガタガタと揺れる車内。頸椎への負担がとてつもない。

 

 

 

12時頃、ジープは国境に到着。

インド出国スタンプをもらい、ネパール側のイミグレでビザをもらう。

滞在日数によって金額が変わるが、僕が買ったのは15日間のビザで、25USドルと証明写真1枚が必要。

 

難なくビザを取得し、ネパールに入国。

両替屋でネパールルピーを入手する。

1ネパールルピー=約1円と、日本人にとってはわかりやすいレートだ。

 

 

 

ポカラ行きのバスを探していると、旅行代理店の男が声をかけてきた。

「ポカラ行きのバスを買うならこっちだ」

国境付近ではガードを固くしなくてはいけない。身構えながら、男についていく。

 

男に連れられ、小さな旅行代理店にやってきた。

ポカラ行きのバスは400インドルピー。(約780円)

安いのか高いのかわからないが、疲れていたので言い値で買った。少しぐらいボラれてもいい。迅速な移動が最優先だ。

 

 

バスが来るまで20分ほどあるというので、近くにあったレストランで昼食をとる。

そういえば、昨晩からあげ定食を食べてから何も食べていない。おそろしく腹が減っている。

なんの変哲もないカレーセットだが、クソうまかった。
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空腹は最高のスパイスだ。

サンジにメシを食わせてもらったギンの気持ちが、痛いほどわかった。

 

 

 

旅行代理店の店内に座ってバスを待っていると、同じ男が話しかけてきた。

「ポカラでの宿は決まっているのか?

タクシー送迎付きで425インドルピー(約800円)の宿があるから予約していけ。

バス停からレイクサイド(宿密集エリア)までは離れてるから、通常ならタクシー代で200インドルピーぐらいかかる。でも、このホテルならタクシーが無料で迎えにきてくれるからリーズナブルだよ」

 

バスと同時に、無料タクシー付きの宿を勧めるセールストーク。

この手法は過去に味わったことがある。そう、タイ〜カンボジアの国境だ。
※参考記事⇒カンボジア入国。狙われた日本人、この旅最大の危機に戦慄する

あのときは後味の悪い思いをしたが、今回はどうだろうか。

 

じっくりと相手を見定める。

男は善良な従業員のように見える。

 

デカルトが頭の中でささやく。

「すべてを疑いなさい」

 

 

「そういえば、デカルトも各国を旅行した旅人だったな」などと思いつつ、僕はデカルトを無視した。

「デカルトよ。僕はすべてを疑いつつ、だけどあえてそこに身を投じる。テーゼ(疑う)とアンチテーゼ(信じる)の先にこそ発展はあると、僕は信じている。ヘーゲル的弁証法が僕の思考の支えなんだ」

 

 

 

結局、タクシー送迎付きのホテルを1泊予約し、その場で425インドルピーを払った。

今度こそは、という思いがあった。

 

 

 

13時10分。ポカラ行きのバスがやってきた。

荷物を屋根の上にのせる。落ちたりしないか心配だ。
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パソコンへの衝撃も心配だが、大丈夫だろう。MacBook AirのSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)は、従来のHDD(ハード・ディスク・ドライブ)よりも衝撃に強いのだ。

 

 

 

ほどなくしてバスは出発。

僕は最後部座席に座る。となりには欧米人女性。

少し話してみると、彼女はアメリカ人だった。彼女の話す英語は、ペラペラすぎてほとんど聞き取れなかった。完璧なまでのリンキング。ネイティブの話す英語はなぜか聞き取りにくい。日本的英語学習の悲哀。

※リンキング⇒単語と単語がつながって発音されること。たとえば「Let it go」は「レリゴー」になる。

 

バスの乗客は、僕ら二人以外は全員現地人のようだった。
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国境の町スノウリからポカラまで、走行距離にして200kmほどだろうか。

所要時間は7時間〜8時間らしい。

 

 

 

平坦な道をしばらく走ると、バスは山道に入る。例の、ぐねぐねでデコボコの道だ。

大げさでもなんでもなく、ときどき尻が10cmほどシートから浮き、体がバウンドする。

ベトナム〜ラオス間のバス移動を思い出す。

 

 

 

しかしこのバス、めちゃくちゃ危ない。

道が狭いのに、反対車線をバスや大型トラックがたくさん走っていて、何度もすれ違う。

対向車と10cm程度しか隙間がないのに、ほとんどスピードを落とさず、ギリギリで避けていく。

 

「この運転手、クレイジーだな。まるで、スレスレで避けるのを楽しんでいるようだ。正気の沙汰じゃない」

心からそう思った。

そして僕は生涯で初めて、バスに乗りながら交通事故の覚悟をした。

 

 

 

 

窓を流れていくのは緑の山々。

ときどき、民家のような小屋がポツポツと建っている。
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グラウンドとよぶにはあまりにデコボコな地面で、楽しげにサッカーをしている子どもたち。

 

山道にバイクを停めて語り合うカップル。

 

国や場所が変わっても、人の営みはたいして変わらないのだな。

 

 

 

 

19時40分。バスはポカラに到着した。
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すっかり夜。

旅行代理店の男の話では、バスを降りた場所で、ネームプレートを持ったタクシードライバーが待っているとのことだった。

 

辺りを見回す。

 

 

 

 

いない。

それらしき人はおらず、代わりに寄ってくるのは客引きばかり。

「タクシー?」

「ホテル?」

うるさい。ほっといてくれ。

 

 

またしても、僕は詐欺の被害にあってしまったのだろうか。

屈辱感と焦燥感。

 

 

と、そこへ太った男性が近寄ってきた。ほかの客引きとはどこか雰囲気が違う。

男性「なにか探しているようですね?もしかして、待ち合わせのタクシーが来ていないとか?」

僕「そうなんだ。スノウリでタクシー付きホテルを予約したんだけど、来ていないみたいで」

男性「よくあることだよ。レシートはある?」

僕「これがレシートだよ」

 

レシートを渡すと、彼は携帯電話を取り出し、レシートに記載されたホテルの電話番号をダイヤルした。

なんと、彼はホテルに電話をかけてタクシーを呼んでくれたのだった。

 

男性「あと10分で来るから、あのガソリンスタドで待ってろってさ」

僕「ありがとう。なんとお礼を言ってよいか」

男性「お礼なんていらないよ。それじゃ、よい旅を」

 

そう言い残すと、彼は暗闇の中へ消えていった。

 

 

旅をしていると、このようなヒーロー的登場人物に出会うことがある。彼らはピンチにさっそうと現れ、風のように去っていく。

旅の初日、香港で道案内してくれた男性もそうだった。僕がまだグーグルマップを使いこなせていなかった頃。ビール片手に現れた、仕事帰りの救世主。
※参考記事⇒世界一周出発日の出来事。小松空港から香港まで

 

 

 

10分後、本当にタクシーがやってきた。

運転手の男性は、ホテルの経営者だった。助手席には奥さん、後部座席には5歳ぐらいの娘さんが座っている。

男性「遅れてしまってすみません。バスが予定よりも早く着いたようでして。当ホテルのご利用、ありがとうございます」

その表情は心からの謝罪と感謝を表しており、僕の焦燥感は消えていった。

 

 

 

 

5分ほど車を走らせた場所に、そのホテルはあった。
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湖の周辺。レイクサイドとよばれる、にぎやかなエリアだ。

 

 

部屋はシングル。なかなか清潔。
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荷物をおろして、ほっと一息。疲れたときはシングルに限る。

時刻は20時を少し回ったところ。夕食を食べに行こう。

 

 

 

夕食はホテルのスタッフが教えてくれた店で食べることにした。この辺りで人気のあるイタリアンレストランらしい。

店名は「カフェ・コンチェルト」
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通りを見渡せる2階席の窓際に着席。

ソーセージ・サンドウィッチとコーラを注文。

本格的なソーセージだ。プリプリとした歯ごたえで僕を楽しませてくれる。うまい。
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サラダとフライドポテトもクオリティが高い。

 

 

 

 

2階席から通りを眺めながら、コップを使わず瓶のコーラを飲む。

 

長い移動だったな。

騙されなくてよかった。

 

 

 

湖畔の町は静かで、道路もきれいだ。

 

インドで疲れきった僕の神経が、ゆるゆるとほどけていくのを感じた。

 

 

ポカラ。

何かいいことが起こりそうな予感がする。

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