君の知らない世界一周物語

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なりに電流走る!まさかの空港泊

「この客はいつになったら出ていくんだ」

ラウンジの従業員と目が合うたびに、そんな心の声が聞こえる気がする。

現在時刻は3月12日の15時40分。サンティアゴ行きのフライトまであと15時間もある。ぼくはここプンタアレーナス空港で耐え忍ばなくてはいけない。

 

「なぜこんなことになってしまったのか、、、」

狭いVIPラウンジでひとり、ぼくはMacBookのキーボードを叩いている。

 

 

 

 

時間を3時間ほど巻き戻そう。

コトが起きたのは今日の12時頃だった。場所は南米大陸の南、プンタアレーナス空港のスカイ航空チケットカウンターだ。

 

 

13時25分発のサンティアゴ行きの飛行機に乗るために、ぼくらは航空券を受け取りに来ていた。日本人の旅仲間と3人で、順番にスカイ航空の窓口に並ぶ。

 

1人目、2人目と、仲間たちは順調にチケットを受け取ることができた。そしてぼくの番。

いつものように、窓口の女性にパスポートを渡す。

 

 

 

端末を操作したあと、彼女は困惑した表情でこう言った。

「あなたの席が見つかりません。予約がキャンセルされているようです」

 

 

 

 

電流走る。

 

 

「ポルケ?!」(なぜ?)

スペイン語まじりの英語(あるいは”英語まじりのスペイン語”と言ったほうがいいかもしれない)で、ぼくは必死に抵抗した。そもそもこれが”抵抗”とよべるかどうかすらも怪しいものだが、それでもぼくは抵抗したかったのだ。

そしてそれは無駄な抵抗だということが、抵抗しながらにして、薄々ぼくにはわかっていた。

 

 

 

結果、今日の飛行機はどれも満席で、乗ることはできないということになった。

それでぼくは仕方なく、その場で翌日の航空券を購入した。高くても買うしかない。もともとぼくに選択の余地などないのだ。明日の夕方、サンティアゴ発イースター島行きの飛行機に乗らなくてはいけないのだから。

 

今日乗るはずだった飛行機の航空券は約17,000円。新しく購入した航空券は約53,000円もした。痛すぎる。

 

 

 

「なぜこんなことになったのか」

「事前に避ける方法はあったのではないか」

頭をめぐるさまざまな思い。新しい航空券を購入しながら、ぼくは久しぶりの動揺を隠せなかった。28枚の1万ペソ札を取り出すと、札束を持つ手が震えた。

 

 

スカイ航空の航空券。

航空券検索アプリ「スカイスキャナー」を利用して、いつものようにインターネットで購入した。仲間も同じ方法で購入したのに、ぼくだけのフライトがなぜかキャンセルされていたのだ。

よくわからない。

 

 

 

 

新しく購入した航空券。フライト時刻は翌朝6時だ。

これからプンタアレーナスの宿に戻っても、朝3時頃に起きて空港に向かわなくてはいけない。宿代もタクシー代もかかってしまう。そのコストを考え、ぼくは空港泊することにした。

 

 

不幸中の幸いだったのは、明日のイースター島行きのフライトが夕方発だったということだ。これが午前中のフライトだったとしたら、きっと間に合わなかっただろう。考えるだけでおそろしい。

 

気を取り直して、ぼくは翌朝までの時間の過ごし方を考える。

iPhoneアプリを立ち上げ、プライオリティパスで入れるVIPラウンジがあることを知った。

 

一筋の光が見えてきた。

「よし、ラウンジで時間をつぶそう」

 

 

空港泊経験者なら知っているだろうが、長時間の空港泊はおそろしくヒマだ。

話し相手がいれば多少はマシだが、今日はひとり。悠久の孤独。

 

そんな孤独な空港泊者にとって、ネットやコンセントのあるラウンジは、まさに砂漠のオアシスなのだ。

 

 

 

 

13時15分頃、新しい航空券を購入したぼくは、ひとり荷物チェックを抜けた。

ふとスカイ航空の搭乗ゲートを見ると、ゲートに消えていく仲間の背中が見えたが、ぼくはあえて声はかけなかった。

 

今夜は孤独な夜なのだ。孤独はあまり好きではないが、いまは孤独に慣れておかなくてはいけない。

 

 

 

13時25分。

仲間たちを乗せた飛行機は、サンティアゴへ向けて飛び立った。
IMG_3456

 

飛び去る飛行機を見送ると、ぼくはラウンジに入場した。

 

 

 

ラウンジに入ると、ぼくは少し絶望した。

プンタアレーナス空港のラウンジは、いわゆる”クソラウンジ”だったのだ。

スペースは狭くてネットも遅い。食べ物は、いくつかのフルーツ、ピーナッツ、ビスケットぐらいしか置いてない。
IMG_3458

 

「モロッコのフェズ空港のラウンジほどではないけれど、クソみたいなラウンジだなぁ」

ぼくはここパタゴニアで、フェズ空港の苦しかった空港泊を思い出した。

思えば、フェズ空港のラウンジは史上最悪のクソラウンジだった。ただの待合室みたいなところで、簡素な飲み物しか置いてなかった気がする。

 

それでもぼくがあの空港泊を楽しかった思い出として語ることができるのは、一緒に空港泊してくれた仲間がいたからだろう。

 

 

 

 

 

ラウンジのまずいコーヒーを一口飲み、ぼくはぼくに言い聞かせる。

「つらいときこそ笑顔だ。ぼくは十分にラッキーじゃないか。笑おうぜ、なりよ」

 

笑顔でいれば、つらい出来事からも脳は”ラッキーな部分”を探し始める。笑顔でいれば、ぼくの世界に不幸など存在しないのだ。

 

 

ラウンジのソファーでひとり、口角を上げて笑顔を作ってみる。

考えてみれば、ぼくは十分に幸福だった。

 

ぼくにはブログの読者がいる。

一緒に旅してくれる仲間もいる。

航空券を買えるお金もある。

歌はヘタだが、バックパックひとつで旅できる健康な体がある。

 

ぼくは十分に幸せだ。

 

 

 

 

ここまで書くと、従業員の鼻歌が聞こえてきた。

”フェズ空港”や”3時間前のチケット窓口”へ飛んでいたぼくの意識は、時空を超えて現実世界へ引き戻される。

ここはプンタアレーナス空港のVIPラウンジだ。時刻は17時10分になっている。この記事を書き始めてからもう1時間以上が経過している。

 

 

そろそろ記事を書き終わろう。

明日は無事イースター島へたどり着けていることを祈って、ぼくはブログの記事更新ボタンを押すことにする。

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