7月25日、金曜日。
今日は大移動。
ラオスからタイを経由して、スリランカへ向かうぞ。
移動ルートは以下のとおり。
ラオス・ビエンチャン
↓
↓バス
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タイ・ウドンターニー空港
↓
↓飛行機
↓
タイ・バンコク スワンナプーム空港
↓
↓空港泊からの早朝飛行機。
↓
スリランカ・コロンボ バンダラナイケ空港
なんといっても今回の移動のポイントは空港泊である。
バンコク スワンナプーム空港(以下、バンコク空港)は東南アジアの中心的国際空港で、ここから世界各方面へ飛行機が飛んでいる。
今回、僕がスリランカへ向かう飛行機は、このバンコク空港を7時15分に出発する。
この7時15分というのが微妙な時間帯で、宿をとって早起きして向かうか、前日入りして空港泊か、悩ましいのだ。
悩んだ結果、以前から空港泊をやってみたかったというのもあり、今回はあえて空港泊を選択した。
話をビエンチャンに戻そう。
7月25日の朝、ビエンチャンの宿で目覚めた僕は、チェックアウトしてバスターミナルへ向かった。
10時20分頃、バスターミナルに到着。
タイのウドンターニー行きのバスがちょうど10時30分発だったので、チケットを買って乗り込む。
ビエンチャンからウドンターニーまでは60kmほどだが、バス料金は22,000キープ(約330円)と安い。
僕のとなりの席には現地人っぽい男性が座っており、彼は東南アジア的なフルーツを食べていた。
ライチに似た香りのフルーツが、ビニール袋いっぱいに詰まっている。
バスが動き出すと、となりの男性が話しかけてきた。
男性「よかったら食べませんか?腹がふくれてしまって…」
慣れない手つきで皮をむき、食べてみる。
みずみずしくてほんのり甘い。うまい。
男性の名前はジョーといった。23歳のタイ人。ビエンチャンで働いているが、今日は友達とウドンターニーに遊びに行くところらしい。
たしかに、通路を挟んだ向こう側に、ジョーの知り合いらしき女性と男性が座っている。
ところで、ジョーがくれたフルーツの名前は「ラムニャイ」というのだそうだ。
僕が「ラムニャイ、アロイ(おいしい)」と伝えると、ジョーはうれしそうに笑い、さらに追加のラムニャイをくれた。
バスはメコン川沿いの道を走っていく。
30分ほど走っただろうか。バスはラオスータイの国境に到着。
問題なく通り抜け、タイに入国。
13時頃、バスはウドンターニーのバスターミナルに到着した。
飛行機の出発は19時45分。どこかで時間をつぶすか…と思っていると、ジョーが話しかけてきた。
「今日は僕の彼女と、僕の男友達と3人で遊びにきたんだ。これからランチを食べるんだけど、ナリも一緒にどうだい?」
渡りに船とばかりに受け入れ、4人でランチ。そのへんで見つけた屋台でヌードルを食べた。
僕がお金を出そうとすると、ジョーが制止して言う。
「ここは僕が払うよ。そのかわり、もし僕が日本に行くときは何か奢ってね」
さわやかな笑顔だった。
ありがとう、ジョー。
ランチを終え、3人と別れる。その背中を見送りながら、ふと僕は思った。
「男2人に女1人。ノルウェイの森みたいだな」
彼女とくっついて歩くジョーと、その後ろを離れて歩く、ジョーの男友達。
僕はそこに、ある種の寂しさを共感せずにはいられなかった。その寂しさが村上春樹に由来するものなのか、実体験に由来するものなのか、僕にはわからなかった。
ジョーたちと別れてから、僕はぶらぶらと時間をつぶした。ミスドでドーナツとコーヒーを楽しみ、電気屋でiPhoneのパーツを物色した。
気がつくと夕暮れどきになっていた。
トゥクトゥクでウドンターニー空港へ向かう。まったく理解できないタイ語で、ペラペラと楽しげに話しかけてくる運転手。どこかで見た風景だな、と僕は思った。
19時45分。バンコク行きの飛行機は予定時刻どおりに離陸。
1時間ほどのフライトで、21時頃バンコク空港に到着。
さあ、これから朝まで長丁場だぞ。
僕はプライオリティパスを持っているので、出発ロビー内に入りさえすればラウンジが利用できる。
しかし、バンコク空港では通常、チェックインは離陸時刻の3時間前からだ。今回は7時15分離陸なので、出発ロビー内に入れるのは早くても4時30分頃ということになる。
4時15分まで出発ロビーの外で時間をつぶそう。
バンコク空港はとてつもなく広い。そしてその広さに見合った数のベンチがある。席と席のあいだの邪魔な手すりがないタイプのベンチなので、体を伸ばして寝られる。地べたに座っている人もいた。
ところどころにコンセントもあるので、スマホやパソコンも充電できる。残念ながらフリーWi-Fiは飛んでいないようだった。
24時頃。バックパックを枕にして、ベンチに寝てみる。が、どうも落ち着けず、ウトウトするだけになってしまった。
3時頃に起きて、空港内をウロウロと散策。さすがにこの時間になると人も少ない。
気づくと4時を過ぎていたので、チェックインカウンターに並ぶ。
4時15分。チェックインカウンターがひらき、スリランカ行きの航空券を入手。
荷物チェックを通過。
出国審査窓口で、パスポートにタイ出国スタンプを押してもらう。
料理に期待していたが、サンドウィッチ・パン・スナック類・フルーツしかなくて、少しがっかりした。
以前ここのラウンジに来たときは、すごくうまいカレーライスが置いてあったのに…
別のラウンジにならマシな料理が置いてあるかもしれない。そう思ってラウンジを3つハシゴしてみたが、結局どこも同じものしか置いていなかった。
2時間でバンコク空港のラウンジを3つもハシゴしたのは、おそらく僕だけだろう。
もしかしたら、時間帯や季節によって、ラウンジの料理も変わるのかもしれない。そう結論づけ、僕は幻のカレーをあきらめた。
スリランカ行きの飛行機は、予定どおり7時15分に離陸。
11時30分頃、コロンボ・バンダラナイケ空港に到着した。
空港の両替所で、タイ・バーツをスリランカ・ルピーに両替えする。
700バーツ(約2,100円)が2800ルピーになった。1ルピー=約0.7円といったところか。
空港を出ると、例によってタクシーやトゥクトゥクの運転手が群がってくる。
全部無視して、僕はローカルバスを探す。今までの経験上、たいてい空港からは安いローカルバスが出ているものなのだ。
タクシー運転手の攻撃を華麗にスルーし、歩き続ける。空港の入口から少し離れた場所で、僕はそれを見つけた。市街地へのバスだ。
予想どおり、バスは安かった。約30km離れたコロンボ中心部まで、120ルピー(約80円)。
腹が減っていたので、ターミナル内のカレー屋でカレーライスを食べた。チキンと豆がうまい。ライスにはほとんど粘り気がない。僕の好きなパサパサライスだ。料金は170ルピー(約120円)。
腹もふくれたところで、次の移動。
コロンボから130kmほど離れた町・ダンブッラへ向かう。
ダンブッラで1泊して、翌朝シギリヤロックを見に行くのだ。
僕がスリランカで唯一見たいもの。それが世界遺産・シギリヤロックである。
「ダンブッラ行きのバスはどれですか?」
ところで、スリランカのバスは、ドアが開いたままの状態で走る。
しばらく見ていると、なぜドアを開けたまま走るのかがわかった。
理由のひとつは乗り降りの時間短縮。バスはしっかり停まってくれない。ときには、低速で走りながら乗客を拾う。高齢者に優しくないバスだな、と僕は思った。
もうひとつの理由は、物売りが出入りしやすいように。スリランカでは、バスが停車したり、スピードが緩くなったりすると、路肩に待機していた物売りが乗り込んでくる。カゴにペットボトルの水やお菓子を入れて、バス車内で売るのだ。
いいシステムだ。僕はちょうど喉が渇いていたので、水を買った。
ガタガタの道路を走ること5時間、バスはダンブッラに到着した。時刻は18時30分頃。
路面状態が悪いので、たった130kmの距離に5時間もかかるのだ。
「帰りもこれに乗らなきゃいけないのか…」
僕は少し絶望した。しかし絶望を恐れてはいけない。絶望と向き合える人間だけが、希望と出会うことができるのだ。
バスを降りて周囲の状況を確認。なかなかの田舎っぷりだが、ATMがあったのでお金をおろす。10,000ルピー(約7,000円)おろしたら、札束が出てきて焦った。500ルピー札16枚と、100ルピー札20枚。
そうこうしているうちに、時刻は19時をまわろうとしている。
今回は宿を予約していない。が、宿が集中しているエリアはあらかじめグーグルマップで調べてきているので問題ない。距離は2km程度。時間もあるし、街を見ながら歩いていこう。
宿密集エリアを目指して歩いていると、すっかり暗くなってしまった。
途中、見つけたレストランで夕食。野菜チャーハン150ルピー。(約120円)
パラパラライスだと、何を食べてもおいしく感じるのはなぜだろう。
その後、道路沿いに宿を発見。部屋を見せてもらうと、なかなかいい感じだったので、ここに1泊することにした。
個室で1,800ルピー(約1,400円)と、やや高めの印象。しかし、Booking.comで調べたところ、ダンブッラの宿はこのぐらいが相場らしかった。
長い移動だった。
シャワーを浴びてベッドに横になると、スイッチが切れたロボットのように眠りに落ちた。
明日はいよいよシギリヤロックだ。
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