君の知らない世界一周物語

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「自己啓発本は読まない」森山さんの行動哲学

森山さんの運転するパジェロに揺られ、早朝のサンタクルスを走る。

20分ほど走ったところで大通りを脇道に入る。

車に乗ったまま自動開閉の門を抜け、高い壁に囲まれた敷地に入った。

100m四方はあろうかという広い敷地には芝生が敷かれている。放し飼いにされたドーベルマンのお出迎えに少しびびる。

敷地の真ん中に、一軒の大きな建物がある。村上春樹『羊をめぐる冒険』に出てくる草原の館みたいだ。

森山邸に到着したのだ。

 

うわさ通り、森山邸は大豪邸だった。ここはきっと、小説の主人公にしかたどり着けない幻の館だ。ぼくはラッキーだ。これまでにない高揚を感じる。

 

 

さっそく2階の部屋へ案内され、荷物を置いて下におりると、森山さんがコーヒーを入れる準備をしていた。
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「移動で疲れたでしょう。シャワーを浴びてきてください。コーヒーを入れておきますから」

なんというホスピタリティ。紳士。

ぼくはこのとき、なぜか村上龍『だいじょうぶマイ・フレンド』に出てくる紳士ゴンジー・トロイメライを思い出した。

 

 

 

 

広い脱衣場には、大きな鏡と洗面台。

浴室に入ると6畳ほどの広さがあり、シャワーヘッドも2か所ある。おまけに大きな浴槽までついている。

 

「地獄のあとには、こういった天国が待っていることもあるのか」

ぼくは幸せな気持ちで熱いシャワーを浴びた。

 

 

 

シャワーからあがると、コーヒー片手に森山さんがキッチンで待っていた。

 

豆から挽いて入れられたうまいコーヒーだ。グアテマラでよく飲んだコーヒーを思い出す。

 

 

キッチンの時計をちらりと見ると、午前5時を少し回っている。

テーブルを囲んで二人でコーヒーを飲みながら、森山さんにこれまでの経緯を説明した。

 

グアテマラで会った旅人から「サンタクルスの日本人夫婦」の話を聞いたこと。

旅中、誰に聞いてもその夫婦に関する情報が得られなかったこと。

パラグアイのペンション園田で、ようやく森山さんのことを知っている旅人に会えたこと。

 

 

 

結局、ぼくは眠気も忘れて森山さんと話し込んでしまった。

気づくと7時を過ぎており、奥さんが起きてきた。

 

ぼくは奥さんに自己紹介をして、おいしい朝食をいただいた。

 

 

 

 

少し休んで、すぐに外出することになった。

森山さんがサンフアン日本人移住区へ連れていってくれるというのだ。

 

ボリビアのサンフアンは、パラグアイのイグアス居住区と同じように、日本人が移住してきて森を切り開き、村を作った場所だ。

 

 

サンフアンは車で2時間半ほどの場所にある。森山さんは軽快にパジェロを飛ばす。

 

 

 

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森山さんは顔が広く、ここで何組かの日本人居住者と引き合わせてくれた。いずれも興味深い話が聞けた。

 

 

しかしぼくにとって、本当に興味深い話が聞けたのは、サンフアンからの帰りの車内だった。

 

ぼくが興味津々で質問するので、森山さんが半生を語ってくれたのだ。

 

 

ぼくの予想通り、森山さんはまさに波瀾万丈の人生を歩んだ人だった。とてもじゃないが、「山あり谷あり」というようなありきたりな言葉で形容できるような人生ではない。

森山さんの半生を文章にするのは難しいので、興味があるかたはサンタクルスまで来て直接本人の口から聞いてほしい。

 

 

 

森山さんの行動哲学を一言で言うなら、「インスピレーションと行動力」だ。

ひとつだけ、森山さんの人生エピソードを紹介しよう。

 

森山さんは現在74歳だが、70歳のときにサンタクルスへ移住してきた。英語もスペイン語もほとんどしゃべれないのに、「ボリビアで別荘の管理を住み込みでやってほしい」という友人からの依頼を引き受けたのだ。

当時、森山さんは田舎で農家をやっていたが、70歳にして田畑と家を売り払い、体ひとつで飛行機に飛び乗り、地球の裏側までやってきたのだ。

 

森山さんは「勇気の行動哲学」の体現者だ。

これまでの常人離れした経験から、森山さんは「人生は計画通りにいかない」ということを知っているのだ。だから、計画は立てすぎない。5年後10年後の計画なんて立ててみても、必ずイレギュラーなイベントが発生して予定が狂ってくる。それなら、臨機応変に対応できる力、いわば「アドリブ力」みたいなものを鍛えたほうがいい。それが森山イズムだ。

瞬間瞬間で決断・即行動をしていくのだ。

 

 

森山さんは言う。

「なんでも、やってみたらいいんですよ。やってみて、うまくいったら儲けもの。失敗したら、これは自分には向いてなかったんだと納得できるし学びになる。人生における出来事は、すべてが学びの機会なんですよ。私は現在74歳ですが、”まだ74歳だ”と思っているし、毎日が勉強の日々です」

 

 

 

 

変化とはすなわち「成長」「進化」である。

変化の激しい時代だ。変化に対応できない人は取り残され、対応できる人は生き残っていく。

 

 

森山さんはこうも言う。

「私も昔はいろいろな本を読みました。もちろん自己啓発本とよばれるものもです。ですが、最近はあまり読まないようにしています。本に書いてあることは他人が考えたこと。それに従って生きるということは、私ではない誰か他人のものさしで生きるということになります。私は、他人(本)に洗脳されて行動するのはイヤなのです。私は自分自身の判断で生きたいので、いまでは本は読まなくなりました」

 

これについてはぼくも同意だ。

本を読みすぎると、頭でっかちになって動けなくなってしまう。自己啓発本を読んでいるあいだは、なにか頭がよくなった気がするし、人間としてのレベルが上がったような錯覚に陥る。しかし、実際は違う。本を読んだだけでは、なんら成長していない。

人が成長するのは、「積極的に行動したときのみ」つまり「手足を動かして物理的になにかを変えたときのみ」なのだ。

 

本やブログを読んで「へ〜、そうなのか。勉強になった」などと納得して、気持ちよくなっているだけではいけない。

勉強になったと思ったのなら、それをすぐに実行に移さねばならない。明日ではなく、いまやらなくてはいけない。

 

 

 

ぼくも社会人になってから、たくさんの自己啓発本を読んだ。おそらく100冊は超えているだろう。

行動を続けてきた結果、ぼくは少しずつ”物事を抽象化する思考”ができるようになった。抽象化する思考ができるようになると、あらゆるものは次元の高いところでつながっている、ということがわかるようになる。スティーブ・ジョブズ的にいうなら「過去の出来事が、まるで点と点がつながるかのように、意味をもってくる」のである。

”過去の再定義”とでもいおうか。

 

ところで、ほとんどの自己啓発本というのは、同じことしか書かれていない。思考の抽象度を上げてみるとそれがわかる。

どんな自己啓発本も、ひとつの真理から生み出された具体的手法解説書にすぎないのだ。

 

 

仕事や勉強にも大きく役立つ「抽象化思考」とはなんなのか、少し説明を試みたい。

”物事を抽象化して考える”とは「物事を見て、物事以上のものを見ようとすること」である。

言い換えるなら抽象化とは、「複数の事象から共通点を見つけ出して理論を抽出し、他分野に応用する」「理由・目的・出発点をつかむ」あるいは単に「分析する」などともいえるだろう。

 

抽象化とは、物事を単なるそれとして受け止めず、それよりも高い次元にある”原型”みたいなものを見ようとする試みだ。

ここでいう原型とは、哲学の”プラトンのイデア”や”カントの物自体”に近いものだ。

数学的にいえば「帰納」に近い。

 

 

「こいつはなにを言っているんだ」と思う人もいるかもしれないが、抽象化して考えるクセがつけば、人生のあらゆる事象を自己成長の糧とすることができるようになる。

以下のブログ記事が参考になるかもしれない。

具体的思考とは?抽象的思考とは?

頭の良い人の抽象化思考

 

 

 

抽象化する思考で森山さんを眺めていると、その一挙手一投足から深い学びを得ることができる。

ぼくはもう少しだけ、ここでの生活を楽しみたいと思う。

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