君の知らない世界一周物語

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天文学的な出会い「二人のネトゲ廃人」

netogehaijin
クスコの最強宿カサデルインカ。屋上でいつものように朝食を食べていると、大柄の日本人男性と相席になった。

圧倒的奇跡性。

この出会いこそが、おそらくこの旅で、いや、ぼくの生涯においてさえも、ぼくの心にもっとも印象深く残るであろう、天文学的確率の出会いとなった。

 

彼は日本人だが、ニックネームは「マイケル」という。顔が欧米人っぽいのでこのニックネームがつけられたらしい。

 

 

マイケルは外見こそ大柄だが、腰が低く礼儀正しい男という印象。

当たり障りのない会話から、「ダハブでダイビングライセンスを取得した」という話題になった。

 

マイケル「ぼくも去年の12月にダハブでライセンスを取りましたよ。インストラクターはさおりさんという日本人女性でした」

なり「ぼくはまりさんという日本人女性のインストラクターでした。さおりさんとは同い年同士で盛り上がったなあ」

マイケル「あれ?なりさんってもしかして”君の知らない世界一周物語”のなりさんですか?」

なり「そうですよ」

マイケル「え!!!いつも読んでます!あの、ネット広告業で稼いでるなりさんですよね?うわー、すごい!まさか会えるとは!ずっと会いたかったんです。Facebookもフォローしてます。ダハブで”ミスターミュージック”にも会いましたよ」

※参考記事 さよならダハブ。ミスターミュージックのオレンジ

なり「えー!うれしい。ありがとうございます。マイケルさんはどういう経緯で旅に出たんですか?」

マイケル「じつは、27歳ぐらいまで数年間ニートをしてまして、そのあと小学校教員になりました。教員は7年ほど続けましたが、この3月に退職して、少しだけ旅をしてまた6月に帰国して、教員採用試験を受けるつもりです」

なり「おもしろい人生ですね!ちなみにニートのあいだはなにをしていたんですか?」

マイケル「ネトゲ廃人をしてました(笑)」

※ネトゲ廃人とは?⇒ネットゲームをやりすぎてリアル(現実生活)に支障をきたしてしまった破綻的人間のこと。ゲームしたさに大学を中退してしまったり、子育てを放棄したり、離婚してしまったり、仕事を辞めてしまったりする。部屋に引きこもって1日24時間ゲームをし続けたり、「仮想世界こそが自分が本当に活躍できる場所だ!自分が必要とされている場所だ!おれ強い!」みたいに感じたりする。まっとうな人生を送っている人からすれば、”異常な人”と思われても仕方がない存在である。ちなみに、ネトゲ廃人を扱ったアニメとして「ソードアート・オンライン」があるが、めっちゃおもしろいのでおすすめです。

 

 

 

マイケル「実家でニートしながらネトゲ廃人してましたよ。親のすねをかじり続けてました」

 

なりに電流走る。

 

なり「え、ぼくもネトゲ廃人でしたよ。リネージュっていうオンラインRPGをやってました」

※リネージュとは?⇒韓国発のオンラインRPG。もう15年ほど続いており、一部のファンには根強い人気を誇る。

マイケル「!!!!!マジですか!ぼくもリネージュですよ」

 

なりにギガデイン走る。

※ギガデインとは?⇒ゲーム「ドラゴンクエストシリーズ」の雷系魔法。

 

なり「ええええ!!ちなみにサーバーは???ぼくはカノープスでした」

※サーバーとは?⇒オンラインRPGリネージュには、いくつかのサーバー(世界)がある。アクセスの集中を避けるためだったり、サーバーごとにPK(プレイヤーキル。殺人のこと)の可否など規制があったりと、世界ごとのルールが微妙に違ったりする。ちなみにぼくがやっていた頃は、リネージュには6つのサーバーが存在していた。

マイケル「!ぼくもカノープスでしたよ。プレイヤー名は○○といいます」

なり「○○さんですか!!!!知ってます。カノープスではめちゃくちゃ有名人じゃないですか。うわぁ、まさかリアル(現実世界)で会えるなんて!ぼく、ギラン(ゲーム内の町の名前)で○○さんと話したこともありますよ」

マイケル「こんな偶然ってあるんですね、、、」

なり「本当、天文学的確率の出会いですよ。だって、リネージュなんてマイナーなゲームだし、しかもサーバーが6つもあって、同じサーバーで同じ時期にやってたなんて、、、。

当時カノープスでやってた日本人って、たしか2,000人ぐらいだったと思います。

そんなマイナーゲームの元ネトゲ廃人の二人が、旅をしていて地球の裏側で偶然会うなんて、奇跡としか言い様がない。しかもぼく、○○さんには憧れてました。有名人だったし」

マイケル「いやあ、そんな自慢できるようなことじゃないですよ(笑)言うてもただのニートですからね」

なり「ぼくもネトゲ廃人だった頃はほぼニートだったけど、一応大学生やってました。学期の単位半分ぐらい落としたりして(笑)」

マイケル「ネトゲ廃人あるあるですね(笑)みんな単位落としまくる」

なり「帰宅後まずやることは、パソコンの電源入れる、っていう」

マイケル「さすがにボトラーまではいかなかったですけどね」

なり「ぼくもさすがにそれはないです(笑)」

※ボトラーとは?⇒トイレに行く時間さえ惜しみ、手元に置いたペットボトルに小便をする人のこと。ボトラーが実在するのかは謎であり、ある種の都市伝説ではないかと思われる。

 

なり「それにしても、ニートネトゲ廃人から小学校教員になるなんて、めちゃくちゃおもしろい経歴じゃないですか。ぼくはそういう型破りな教師こそが、これからの日本には必要だと思っています。

大きな絶望を経験した人のほうが、大きな希望を生み出せるものです。平凡な人生を歩んだ人には、平凡なものしか生み出すことはできない。なぜなら、人生とはシーソーのようなものだからです。シーソーは深く沈んだぶんだけ、高く飛び上がることができる。

ぼくも将来は教育関係の仕事がしたくて、教員免許ももっています。ただ、教育者たる人間は、いろいろな生き方・価値観・働き方があることを知っているべきだし、そういう経験をするべきだと思うんです。

たとえば、ネット広告業という仕事の存在すら知らない大人もいます。大人は子どもに”制限のない夢”をもたせてあげる義務がある。でも、”知らない夢は描くことさえできない”。なぜなら、夢や目標というものは知識の中から選ぶことしかできないからです。

すべての大人は、多種多様な生き方があることを知るべきです。

だからぼくは、自分が教育者になる前に、たとえば旅人だったりネット広告業だったりサラリーマンだったり、そういう”優等生な学生あがり教師”ではできない経験をしておきたいと思い、いろいろとやっています」

 

 

 

そんな感じで、リネージュの昔話や教育に関する話で盛り上がった。

 

 

マイケルは、本当はこの日の夜のバスでプーノ(町の名前)に向かうはずだったが、ぼくと会話するために予定を変更してくれた。

夜遅くまで語り合い、マイケルは翌朝のバスでクスコを去っていった。

 

「今度会うときは、アデン(リネージュの世界の名前)で会いましょう」という、ネトゲ廃人一流のジョークを残して。

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